菅さんの憂歌-Tom Trauber's Blues-
いよいよ衆議院議員総選挙ですね。岸田政権にとって今後の政権運営の鍵となる大事な選挙です。しっかり考えて貴重な1票を投じたいものですね。ところで本日は先日突然に退陣した菅前内閣総理大臣について語ってみたいと思います。菅政権はわずか1年という短命に終わりましたが、本当に多くのことを成し遂げて、最近ようやく評価する声、感謝の声が各方面から聞こえてくるようになりました。しかし在任期間を通じてコロナウイルス対策には本当に苦しんで、変異ウィルス蔓延の中で総理の力の源泉である解散権についても行使することができす、最後は弓折れ矢尽きて、文字通りボロボロにぼろぼろになっての総裁選不出馬となりました。
菅さんに対するメディアの批判はすごかったですね。特にコロナウイルス対策について、評論家、メディア解説委員、ジャーナリスト諸氏、皆様横並びでダメ出ししていましたね。しかし菅さんのコロナ対策に対する是非は、後日きちんと検証された上で評価されるべきで、今はその是非については言及すべきではないと思います。しかしながらその結果について見てみると、感染者数、重傷者数、死亡者数、いずれも欧米に比べて明らかに少なかったということは数字がものがたっています。菅さんに対する批判はその対策の中身よりむしろ言葉が響かない、質問にきちんと答えないという点に比重がかかっていていました。加えて原稿を棒読みしているという言いがかりのようなことを言う方もいましたね。
確かに菅さんの喋り方はお世辞にも流暢とは言えませんね。一生懸命聞いていないと頭に入ってこないのですが、ちゃんと集中していたらいいことも言っていましたよね。私としてはこの非常時に専門的にニュース解説をしている人までが、言葉が響かないという理由だけで批判しているのには違和感を感じていました。単なるコメンテーターや芸能人は別ですよ。彼ら彼女らに内容を精査するだけの関心や暇はないでしょうからね。説話の内容がおかしければそのことを指摘して対案を示す、また内容的におかしくないものであったらそのことをきちんと解説する、そのことこそがメディアの専門家の仕事であると思いますよ。少なくとも菅さんは喋りは下手くそでしたが、誠実にこの難題に取り組んでいたと私は思っています。
菅さんは皆様ご承知の通り秋田のいちご農家のご出身で、上京後はアルバイトに明け暮れて、苦学の末に大学を卒業という文字通り叩き上げの人生を送られています。そうした苦労の連続であった菅さんの国会議員になってからの政治活動を貫いてきたのは、現状をよりよく変えていくという改革志向であったと思います。日本の成長をがんじがらめに縛っている規制の改革、規制による既得損益の打破、政策が進まない原因になっている縦割り行政の打破が菅さんの一貫した立ち位置であったと思います。このような改革を行なっていくと必然的に敵も多くなりますよね。現状を謳歌している人たちや変化を望まない人たちからは、おそらく有形無形の抵抗を受けてきたことと思います。そんな中で、不器用で、口下手で、頑固じじいの菅さんが変化に挑戦して戦ってきたということを考えるとちょっと感慨深いものですね。(もちろん敵対する人たちはたまったもんじゃないでしょうけどね)
菅さんの総理としての業績は数多くありますが、私はオリンピックを世間の猛反対の中でやり切ったことと、ワクチンの確保とスピード摂取をやり遂げたこと、以上2点をあげたいと思います。オリンピックについてもコロナ対策同様メディアは猛反対でしたね。感染者増加の中仕方がないことですが、メディアだけではなく日本中全体がオリンピックを開催してはいけないんだという同調圧力に覆われていましたね。しかしそのような中で一貫してぶれることなくやり切ったことで、日本を元気にすることが出来ましたし、加えて世界との約束も果たすことが出来ました。このことは日本の国際的な評価を大きく高めたと思います。そしてワクチンです。ワクチン施策については異論を唱える人はいないと思います。菅さんの行動力と大号令によって、世界でも類をみないスピードでの摂取が進み、結果的に多くの国民の命を救うことになりました。私はコロナウイルスが日本中で感染と不安を撒き散らしていた時期の日本の舵取りを菅さんがしていてくれていて本当によかったと思っています。(不幸にも病に倒れた方、そしてそのご家族縁者の方には本当にお気の毒ですが)菅さんには心から感謝を申し上げたいと思っています。最前線から退かれた今は、本当はゆっくり休んで欲しいと思っています。多分無理だと思いますし菅さんも望んでいないでしょうけれど、選挙なんてほったらかして奥様と旅行でも行かれたらどうですか?オーストラリアがいいですね。Walzting Matildaを口ずさみながらぶらぶら歩きなんてどうですか?(菅さんは北島三郎かもしれませんね)
酔いどれ詩人が酒で潰れた喉で歌う「Tom Traubert' Blues」。
おやすみ通りの掃除の人、おやすみ夜警のおじさん、ビルの門番さん、そしてゆっくり休んでください菅さん。
今回から取り上げた曲の解説も少しだけ。この曲はTom Waitsの曲で1976年に発売された「Small Change」というアルバムに収録されています。私は「Asylum Years」というアルバムでこの曲を知りました。異国の街を酔っ払いの放浪者が彷徨い歩くというこの曲のイメージは,お酒を嗜まない菅さんにはそぐわないかもしれません。しかしこの曲の中で、Tomはやさぐれていますが、兵隊さんやストリッパーの女の子、車椅子の老いぼれ爺さん、通りの掃除人、夜警、門番、そして100人も人を殺したマチルダにさえ暖かい視線を注いでいることがが感じられます。そんなところが失意の菅さん、そして冷徹に権力をふるってきたけれど本当は優しいのだろう菅さんのイメージと重なりました。とてもいい曲なので是非聞いてみて下さい。
このような駄文を最後まで読んでくださってありがとうございます。
皆様にとって明日が今日より良い日となりますように。