答えはただ風に舞って -Blowin’In The Wind-
Time fliesとはよく言ったもので、時は飛ぶように過ぎていって、2025年もあっという間に終わろうとしていますね。みなさんにとって、今年はどんな一年でしたか?良い年を送られたでしょうか?過ぎ行く一年を振り返ってみると、本当にいろいろな事が起きて、今年も何かと騒がしい一年でしたよね。今年の干支は、乙巳(きのと‣み)でした。陰陽五行思想によると、十干の乙は、木の陰を意味していて、植物が成長して広がっていく様子から、柔軟性、協調性をイメージしているといわれています。十二支の巳は、文字通り蛇の事で、蛇が脱皮しながら成長していく様子から、復活と再生を象徴しているそうですね。そしてこの組み合わせは、努力を重ねて、物事を安定させていくという意味を持っているといわれています。乙巳の年が終わりを迎えるにあたって、果たして世界のリーダーたちは、世の中が安定する為に、今年一年どの様な努力を重ねてくれたのでしょうか。
今年のこの駄文は、トランプさんの大統領就任がもたらすであろう混乱について、懸念を述べさせていただく事からスタートしました。案の定この老人は、無茶振り無理強い、強請(ゆすり)に叩き、何でもありのやりたい放題で、世界中がこいつの公序良俗に反する振る舞いに振り回された一年でしたよね。このジジイは、振り回して混乱を与えただけでは満足できずに、アメリカ国内、そして世界中に深刻な分断をもたらしてしまいましたね。このクソジジイの力ずくで強引なやり方が、パレスチナの停戦に寄与して、ウクライナの戦争も解決に向けて前進していると評価する声もありますが、得られるであろう結論は、ネタニヤフの腐れ外道やプの字の狂犬野郎にとって都合がいい方向に向かっていて、他にもっといいやり方があったのではないかと思うと何だか微妙な気持ちになってしまいますよね。この自己中ジジイがやらかした悪事をいちいち取り上げたらキリがないのですが、中でも私が最も罪深い所業だと思っているのは、パリ協定からの離脱ですね。
アメリカがパリ協定からの離脱をした事で、本年のCOP30は今一つ盛り上がりに欠けたものとなってしまいましたね。この様なイベントが開催されている事を知らなかった人も結構いたのではないでしょうか。COPとは、“締約国会議(Conference of the parties)”の事で、国連において気候変動対処の枠組みを決めた条約(UNFCC)を締結した国々が、具体的にどの様に対策を行っていくのかという事を決議する為に毎年行われています。パリ協定は、2015年に行われたCOP21で採択されました。この時に、世界の平均気温上昇を2.0度より低く、1.5度以内に抑える様に努力するという事が決められて、そしてその為に締約国は、CO₂の排出削減目標(NDC)を各自定める事となっています。今年は、パリ協定採択から丁度10年目、そして1992年にリオデジャネイロで行われた世界サミットでUNFCCが採択されて以来30回目の節目に当たる年でした。その様な特別な年に、COP30は11月10日から、奇しくも世界サミットと同じブラジルのベレンで開催されました。ベレンは、世界最大の熱帯雨林を懐に抱えているアマゾン川の河口にある港町です。ブラジルは、アマゾン熱帯雨林の消失という問題に直面していて、気候変動対策において重要な、そして特別な国として位置付けられています。なので、問題の最前線であるベレンでの開催は、本来ならばもっと人々から注目を集める筈であったと私は思っています。加えて、近年の大雨や干ばつ、極端な高温などの激しい気象を鑑みると、気候変動への対処は待ったなしの問題である筈で、日本のメディアにも、もっと大々的に取り上げて欲しかったですね。しかし残念ながら、COPの期間中この話題について、単発でのニュースや新聞記事が報じられる事はあったものの、その扱いは圧倒的に小さく、世間の関心を集める話題として取り扱われてはいませんでしたね。
昨年記録された世界の平均気温は、産業革命前と比べてプラス1.5度を上回ってしまって、とうとうパリ協定の目標値を超えてしまいました。単年度の結果なので、パリ協定の目標が出来なくなったという事に即つながるわけではありませんが、気候変動におけるTipping pointに又一歩近づいてしまった事を端的に表した結果ですよね。実際に今世界を襲っている極端で激しい気象の変化は、人々の生活に暗い影を落としています。つい先日の11月下旬には、東南アジア一帯に記録的な豪雨が襲って、タイやインドネシアでは、洪水による甚大な被害が伝えられています。日本でも今年の夏は、昨年と同様に異常な高温が続いて、みなさんをうんざりとさせていましたよね。どうやら世界は、昨年に続いて今年も“1.5度の約束”を果たせそうにありませんね。気候変動におけるティッピング‣ポイントとは、超えると後戻りできなくなる程不可逆的な大きな気候の変化が起きてしまう転換点、あるいは閾値の事です。そしてそれは、ティッピング‣エレメントと呼ばれている世界9地域の気温上昇で構成されています。幾つか例示すると、グリーンランド氷床と北極海氷、南極氷床や温帯サンゴ礁、そしてアマゾン熱帯雨林などがありますね。蛇足ながら、ティッピング‣エレメントに構成される地点の気温上昇が何故重視されているかと申しますと、この地域は地球の気候システムに非常に重要な役割を果たしているからだと専門家の方はおっしゃっています。地球の気候システムは、水と大気の大きな循環で保たれているそうです。極地の気温上昇は、偏西風や貿易風という大きな大気の流れに多大な影響を及ぼすそうです。そして大陸の氷床が溶けて海に流れ出したなら、海面水位の上昇を招いて、島嶼諸国に甚大な影響を及ぼす事になります。それだけに留まらず、大量の淡水が海水に流れ込む事によって、生物ポンプという、プランクトンによるCO₂の深海への輸送システムにも重大な影響を及ぼす可能性が指摘されています。一方でアマゾン熱帯雨林は、1500億トン以上という膨大な量の炭素を蓄えてくれているそうですね。そして、降雨によって大気から放出された水を吸収して再び水蒸気として大気に水を戻していく循環に大きく寄与している事から、地球の肺と呼ばれています。ティッピング‣ポイントなんてものはないと言っている評論家もいますが、これら地点での大きな環境の変化が現在の気候システムに与える影響は明らかであり、超えてはならない数値を設定するのは必要な事だと私は思っています。
アマゾン熱帯雨林のティッピング‣ポイントは、3.5度の気温上昇であると想定されています。この世界最大の熱帯雨林は、今まで相当痛めつけられていて、農地や金採掘の為の森林伐採、熱波による森林火災によって当初あった面積の17%、13万㎡もの森林が消失していると報告されています。そうやって失われてしまったCO₂の吸収量は、ドイツが1年間に排出する量に匹敵するそうです。そんな世界のマスターピースともいうべき場所が、今消滅の危機に瀕しています。そんな訳で、今回のCOP30に際して、ブラジルのルラ大統領は並々ならぬ決意を持って臨んだようですね。主要なテーマとなっていた、「いかに化石燃料から脱却していくか」という具体策を合意文書に盛り込んで、その為のロードマップを作成する事を各国に働きかけていたそうです。この提案については、ヨーロッパ諸国をはじめ、アフリカや島嶼国の国々など80か国以上の賛成が得られたのですが、ロシアや中東諸国などの反対によって合意文書に取り入れることはできませんでした。残念な事に日本も、この提案に賛成はしなかった様ですね。どうやら、化石燃料から脱却する為の移行技術(それは、CO₂の地中埋め込みや、水素‣アンモニア混合燃焼発電などと説明されています)を育成する為という理屈らしいのですが、なんだか論点をずらしているだけの様に感じられて、我が母国ながら情けなくなってしまいますね。そんな姿勢が評価された為なのか、NPOの人達から化石賞なるありがたくない代物を今回も受賞してしまって、これで日本は、6年連続の受賞という不名誉な姿を世界にさらしてしまいましたね。
「化石燃料からの脱却」の記載が合意文書から取り除かれた事で、今回のCOP30は成果が乏しいものになったという評価が多い様ですね。そもそも今回のCOPは、開催前から様々な問題点が指摘されていました。アマゾンの玄関口であるベレンでの開催は、環境への象徴的な意味合いはあったものの、単なる地方都市であるこの街には、COPで訪問を予定していた5万人以上の関係者を受け入れるキャパシティがありませんでした。その為参加をあきらめたNPOや団体が多かったそうです。そして、アメリカが代表団派遣を見送った事が、交渉の先行きの見通しを暗くしていて、実りある交渉ができるかどうか疑心暗鬼の中で始まった会議でした。そんな中で、難航した交渉をなんとか合意にこぎ着けて、2035年までに、途上国に対する気候災害による被害を軽減するための支援としての“適応資金”を3倍に増やす努力をするという事と、温室効果ガス排出削減の加速を盛り込んだグローバル‣ムチランと呼ばれる合意文書が採択された事は、一定の成果であるという声もある様ですね。国連のグテーレス総長も、結果は不満であるものの、アメリカ抜きで合意が出来た事については、多国間主義が機能している証左であると評価していましたね。
言うまでもなくアメリカは、世界で最も影響力がある国の一つですよね。そして世界で2番目にCO₂を排出している国でもあります。加えて、重工業の進歩による社会の近代化の恩恵を最も受けている国の一つですよね。かくの如く、現在の気候変動に対しては、責任をもって対処をする義務を負っている筈の国ですよね。にも拘らずトランプの馬鹿タレは、温暖化なんてまやかしだと言い放っています。就任時には、「掘って掘ってほりまくるぜい(意訳)」とバカ丸出しの顔で言い放って、サルよりも頭が悪いMAGAの連中を煽りに煽っていましたよね。現在得られている温室効果ガスによる地球温暖化と気候変動についての知見は、真鍋叔郎先生による気候モデルシュミレートをはじめ、多くの研究者たちの長年にわたるご尽力による科学的な裏付けがされています。それに対して、この因業ジジイが言っているたわ言は、何のエビデンスもないただの陰謀論の垂れ流しです。私は、「毎年フロリダ半島を直撃している巨大ハリケーンが、この変態野郎の別荘、マール‣ア・ラゴをピンポイントに襲撃をして、あの悪趣味な建物をバラバラにしたら、さすがの忘八大将も悔い改めるかもしれないなあ」などという不謹慎極まりない事を考えてしまいました。アメリカにべったりへばりついて、なんでも言いなりになっているサナエ総理にも、こんなバカ大統領には一言モノ申して欲しいものですよね。一言どころかブチ切れて、「おうこら、そこのジジイ、なにを訳の分からん事をグッチャラグッチャラぬかしてけつかるねん!嘘ばっかつきくさってからに!このボケ!ゴチャゴチャぬかしとったら、おどれのドタマ勝ち割って、ストローで脳みそチュウチュウ吸うたろか!」と巻き舌の関西弁で思いっきり罵倒して欲しいですね。日米同盟に重大な禍根を残しそうですが、「こわかったあ~」というキメ台詞で、みんなずっこけて水に流してくれる筈です。
こんな嫌事ばかり言っていたら、脳みそが筋肉で出来ているMAGAのマッチョにショットガンをぶっ放されてハチの巣にされそうでとても怖いのですが、わたくしはこんな振る舞いをしているアメリカが大嫌いなのです。しかしアメリカの名誉の為に申しておきますと、こんなバカげた事を放言しているのは、恥知らずな大統領とその下僕になり下がった連邦政府、そして知能指数ゼロのトランプ支持者だけで、大半の国民が、この地球に今、一体何が起きているのかをきちんとと理解してくれています。合衆国を構成している州政府や都市の首長、そしてNPOや企業、大学を中心とした研究機関や気候シンクタンクなど、5000を超える団体によって構成された“America is All In”という非国家アクターが、この無法者政権の方針には従わずに、パリ協定に賛同してくれている事は一縷の救いですね。カリフォルニア州のニューサム知事は、COP30で行われた会合で、「ベレンに集まった各国関係者との対話は、連邦政府に代わってカルフォルニア州がリードしていく」とまで語っていたそうです。
気候COPに対しては、この場で行われる議論が、産油国や化石燃料に依存していて急激な変化を望まない国々と、危機感を持って積極的に行動していこうとしている国々との間で妥協点が見いだせない為に、努力義務でお茶を濁しただけの非拘束的な結論しか得られない、単なる象徴的なイベントに過ぎないという批判も少なくありません。仰せご尤もだと思いますが、地球温暖化への対応は、人類共通の課題であって、世界が一つになって乗り越えなければならない大きな壁ですよね。そしてその壁は、人類が一つになって結束しなければ乗り越える事が出来ない程の高さで私たちの前に立ちはだかっています。私は青臭い人間で、お花畑の住人なので、壁を乗り越える為であれば、争っている国同士でも協力できる筈だと思っています。人類の生存という究極の目的を前にしたら、領土問題やイデオロギーの違いなどは些細な事である筈だと信じているのです。なので、地球温暖化に関する協議、つまり人類存亡の危機をどの様に解決するのかというアジェンダは、いがみ合い憎しみあっている国家間においてさえも、腹を割って本音の話し合いができる貴重な機会であると思っています。現状では満足できる結論が得られていないとしても、COPの場に世界の国々が集まって、そこで話し合った事、その過程や結論が世界に発信されていく事には十分に意味があると思いますね。地球温暖化や気候変動についての現状や先行きについてグローバルに共有する事は、私達一人一人が、危機感を持って、今後どの様に暮らしていくべきなのかという事を考える良い機会になると考えているのです。
私達は、これからも今まで通り、技術の進歩を享受しながら便利で快適な生活を送っていっても良いのでしょうか?今後も日本が、持続的に経済を成長させ続けながら豊かな国であり続けるには、今以上に電力エネルギーが必要になるのは必然ですよね。例えば、政府が成長産業として位置付けて、積極的に投資をしている半導体やAIの分野では、データセンターや工場の稼働で莫大な電力が必要です。又、今年と同様の異常高温が毎年続く事になれば、「みなさん温暖化対策の為に節電をしましょう」なんて寝ぼけた事を言っている場合じゃありませんよね。当然エアコン使用による電力消費も跳ね上がりますよね。そして、この様な電力需要の増加は、再生可能エネルギーだけでは賄えない事は自明の理ですよね。いずれにしても、行くべき道筋はパリ協定で明らかになっていて、その答えにたどり着くためにどうすればよいのかという選択を私たちは今迫られているのですね。炭素予算と名付けられた、進むべき道筋(つまりパリ協定で決められた事)を履行する為に残された時間は、あと僅か3年しかないといわれています。そうであるならば、選択肢は原子力か。移行技術を活用した化石燃料発電か。再生可能エネルギーか。それとも、これらの効果的な併用か。はたまた、全く新しい技術によるパラダイムシフトに運命を託すのか。私達は、もう答えを出さなければなりませんよね。こんな難しい問題は、私ごときの無知蒙昧が口にを出すべきではないのかもしれません。無能で口先だけの役立たずが、埒のあかない事をア~だコ~だといっていたら、やすえ姐さんから、「おうこらワレ。何も分かっとらんアホウがゴチャゴチャぬかすなや!鼻から割りばし突っ込んで、奥歯ガタガタ言わせたろうか!」とキレられるかもしれませんね。しかし、例え答えが分からずに、オロオロしているだけの無力な自分でも、「思考停止でただ流れに身を任せているよりも、あれやこれやと考えて思い悩んでいるほうが、100倍マシだよね」と自分に言い聞かせながら日々を過ごしていたいものですよね。小難しい事を考えていたらおなかが猛烈にすいてしまったので、お昼ごはんは、近所の韓国食堂にスンドゥブと海鮮チジミの黄金タッグを食べに行こうと心に決めて、いそいそと出かける用意をしているのでした。
Blowin' In The Wind:風に舞う木の葉の様に、容易には掴めない答えを追いかけて。
Blowin'In The Windは、1963年にリリースされたBob Dylanの2枚目のアルバム“The Freewheelin’ Bob Dylan”に収録されています。この曲の邦題は「風に吹かれて」、あまりにも有名な曲なので、みなさんもきっと一度は耳にした事があると思います。沢山の人から愛されていて、多くの媒体で使われている、そして多くのミュージシャンや創造的な仕事をしている沢山の人達に多大な影響を与えた偉大な名曲ですよね。ライナーノーツによると、この曲は、当時のアメリカで大変な問題になっていた黒人差別における公民権運動に触発されて作られたそうです。この曲のLyricでは、「どれだけ歩けば」「どれだけ時間がたてば」「どれだけ弾を打てば」と繰り返されるHow manyのリフレインで、費やされた時間や労力、物量や出来事などを取り上げて、それと対比した物事や希望が実現できるのだろうかと問いかけています。結局その答えは風に舞っているという、とても哲学的な内容なので、聞き手にいろいろな事を考えさせてくれる曲です。その為に、公民権運動やベトナム戦争反戦のアンセムとなっていったそうです。しかし偏屈なディラン先生は、自分の詩が勝手に解釈されて、いろんな運動のシンボルに使われるのが気に入らなかったみたいですね。それでも、ディラン先生には申し訳ないのですが、時代を超えて多くの人達から愛されている楽曲は、作り手の想いを超えて、様々な事を聞き手に感じさせながら姿を変えていくものだと私は思っています。その伝でいうと、温暖化については、温室効果ガスを減らさなければならないという答えが出ているのに、現状は、その為にどうするのかという事を誰もが決めかねていて、そんな様子をみているディラン先生が、「なあ相棒、答えは風に舞っているだけなんだぜ」と呟いている様に感じました。例えるなら、複数の答えが風に吹かれて漂っているのに、みんな誰も、風に舞っている答えをつかみに行くわけでもなく、ただ答えが降ってくるのを待ちながら時間だけが無駄に過ぎていっているという、そんな感じです。実際には多くの人達が、ゼロ・カーボン実現の為に物凄い熱量を持って日々力を尽くしてくれているのに、一向に進まないエネルギー転換の現実を目の当たりにすると、ネガティブな感情が抑えきれずにひねくれた気持ちになってしまって、この駄文で茹をまいてしまいました。どんどん変わっていく地球の気候で酷い目に遭わされている人達が沢山いるのに、只嘆いているだけで、何もできない無力な自分が情けないのですが、それでも、昭和100年がもうすぐ終わろうとしている大晦日を前にして、「答えは風に舞って漂っているのだから、後はそれをつかむだけなんだよ」と思っていたい自分がいるのでした。
このような駄文を最後まで読んでくださって、ありがとうございました。
みなさんにとって明日が今日よりいい日になりますように。

