スケープゴートの独り言 -Helter Skelter-
。
最近、マイナンバーカードの評判が散々ですよね。マスコミ様各位は、連日マイナンバーカードの不具合を、鬼の首を取った様に扱っていますよね。特に問題になっているのは、マイナンバーカードを健康保険証として使用したケースで、医療界の一部の人達や、その周りにコバンザメの様に張り付いている団体の皆様からは、「こんなもんは使えねえ!」なんて声が上がっている様ですね。世間の声に敏感な我らがキシダソーリも、黙ってみていることが出来ずに、秋までに総点検をするなんて事を言い出してしまいましたよね。マイナンバーが登場してかれこれ10年になりますが、今更のこの騒ぎは、「一体なんなんだろう?」と正直私は思っています。この一連の騒ぎを見ていると、真剣に日本の行く末を案じてしまったのです。
国民共通番号制は、意外に古くから考えられていて、1968年、佐藤栄作さんが総理の時代に議論が始まったと言われています。その頃から、国民に固有の番号を割り振って活用する事は、行政を効率的に運営していく事に資するとともに、納税に際しても、効率的に(取りっぱぐれ無しに)運用できると考えられていた様です。しかし国民に番号を振り分ける事は、「国民背番号制」などと呼ばれて、多くの人達からは蛇蝎の様に嫌われて、ゲームセンターのハンマー叩きゲームのワニ(懐かしい)の様に、現れてはてはポカスカ叩かれて引っ込んで、またまた出て来てポカスカひっぱたかれて消えていくといった具合でしたよね。私も、社会人になり立ての頃に国民背番号制のひと悶着があった事を憶えています。当時は、納税者番号制度という形での導入が検討されていましたが、マスコミはTVや新聞媒体に留まらず、週刊誌もラジオも押しなべて大反対キャンペーンを張っていましたね。当時の論調は、国家に番号で管理される事に対する嫌悪感が主な流れであった様に記憶しています。私は、当時愛読していた雑誌が、「君が行ったあらゆる事を国に知られても平気なのか!」とアジっていた事を憶えています。私の学生時代の赤点だらけの成績表や、停学を喰らって坊主頭になった事、参考書を買うと親を騙してエロ本を買った事や年齢を胡麻化してエロ映画館に行った事等々、数々の恥ずかしい過去が全て記録されて、国家の知るところとなって、あらゆる機会に蒸し返されるという事が書かれていましたね。今考えると、何て頓珍漢な事を当時の人達は真剣に語っていたのだろうと可笑しくなってしまいます。しかし、偏った思想信条に殉じている人や、あらゆる事から自由でありたいと望んでいるフリーマンの人達には、自分の行動を知られる事に対する嫌悪と恐怖があったのでしょうね。
共通番号制導入に執念を燃やす政府は、その後、住民基本ネットワークというシステムの導入を行いました。この制度は、住民票に11桁のコード番号を紐付けると共に、希望者に対しては本人確認に使用できる住基カードを発行するという現在のマイナンバーカードに似た様な制度でした。2002年から運用が開始となりましたが、この制度についてもマスコミ様は大反対で、国家監視に加えて、システムのセキュリティーやプライバシー侵害の問題が盛んに論じられて、訴訟(プライバシー保護を保障した憲法13条に違反)まで行われていました。結局住基ネットは、全国全ての自治体に接続されましたが、本人確認用ツールとしての住基カードは普及率1.1%という散々な結果でした。私は、この様な共通番号制を巡る騒動については、正直言ってあまり興味がなく、何か別の世界の出来事の様に騒ぎを眺めていましたね。意識が高い人達は、国家からの監視やプライバシーの侵害は大問題なのかもしれませんが、私にとってはそんな事はどうでもいい事で、役所に知られて困る様なプライバシーも特にありませんでした。
この様な顛末を経て、現在のマイナンバーの制度は導入されました。マイナンバー、正式名称は個人番号と呼ばれています。行政による個人識別番号で、12桁の番号が、日本国民に、あまねく提供されています。使用される目的としては、社会保障関係と税に関わる部分、そして災害時の対策に限定されています。現在批判の的となっているマイナンバーカードを健康保険証として活用するという構想についても、施行当初から考えられていた様です。現在行われている、健康保険の利用方法は、医療機関に保険証を月に一度提示して、医療機関が保険証に記入されている番号や基本情報(住所・生年月日などですね)を入力し直して、支払基金に送って資格確認を行うという方法で行われています。この現行での本人確認と資格審査は、多くの問題が以前から報告されていました。保険証には顔写真が付いていない為、別人なりすましの問題や手入力で作業を行うために生じる過誤請求については、ずいぶん昔から報じられていましたよね。一説によると、こうした過誤請求によって生じる医療費の無駄は、年間1000億円以上にも上るそうです。その様な問題意識から、政府としても健康保険証でのマイナンバーカードの使用を急ぎたいという思いがあったのでしょうね。マイナンバーカードを使用する方法では、カードリーダーにカードをかざして、顔認証もしくは暗証番号入力で本人確認を行って、その結果を支払基金がオンラインで資格確認を行うという、一見シンプルで簡便な方法の様に思えます。2021年10月から、マイナンバーカードの保険証として活用が開始されて、その後、カード普及と健康保険証紐付けの普及を目的とするマイナポイント付与企画という大盤振る舞いが開始された事は、皆さんご承知の通りです。
今回のドタバタ騒ぎの始まりは、このマイナポイント付与企画第2弾からスタートした様に思えます。企画がスタートする以前のカード発行枚数は、7072万枚で、制度開始以来約8年で、おおよそ50%の進捗でした。ところが、現在の発行枚数は、9700万枚となっていて、約1年で約80%まで進捗しています。当初はカードリーダーの設置が大変だなんて文句を垂れていた医療機関も、補助金が投入されて費用負担の問題がなくなったので、多くの施設がマイナ保険証の利用が出来る様になっている様です。そんな風向きを読んだキシダソーリは、昨年10月に、「デジタル社会を新しく作っていく為に、マイナンバーカードがパスポートの様な役割を果たすのです!」と大見えを切って、本年4月からマイナンバーカードの保険証としての使用を原則義務化、加えて2024年の秋を目途に、現行の保険証は原則廃止という事を発表していましたよね。ところが、マイナンバーカードに他人の情報が紐付けられているという事態が多数報告されて、事態は坂道を転がり落ちる様に、一気に悪い方へ転落していきましたよね。
このマイナ保険証の強気の目標設定が、「厳しすぎる」「拙速である」という批判の的になっています。本来、ビジネスの世界では、期限を決めて目標を設定する事は、仕事の基本とされていますよね。私も、以前この駄文に登場した“なんでや上司”から、会議やミーティングで「いつまでにやるんや?」という質問は必ず聞かれていました。私の様なアバウト世界の住人で丼勘定体質の昼行燈社員が、思いっきり糊代を取った余裕がある日程を発表すると、「遅いわ!来週までになんとかしろや!その為に何が出来るのかを考えるのがお前の仕事やろうが!」なんていう、体育会体質丸出しの事を言われていたのを思い出しますね。恐らく、岸田総理や河野デジタル大臣は、各健康保険組合では、きちんと確認を取りながら、慎重な作業でマイナンバーと保険証との紐付けは行われているという前提で、この様な日程の見通しをはじいたのでしょうね。もしかしたら、関係省庁の役人は、関係者がいい加減な仕事をしている事に気が付いていて、余裕がある日程を提示していたのかもしれません。しかし、役人に対する圧が強めの河野大臣あたりが、「なんで来年までにできないんだ?マイナンバーは既に行き渡っているのだから名寄せをすればすぐ処理できるだろう!もっと早くしろよ!」といった事を、パワハラ丸出しの口調で脅迫したのかもしれません。確かに紐付けがきちんと行われていたのなら、現在のデジタルの力を持ってすればそれ程厳しい日程とは思えませんよね。何せ、マイナンバーが通知されてかれこれ10年が経過しています。ところが、この前提条件が甚だ怪しいという事が今回の騒動で明らかになってしまいましたよね。国内最大の健康保険組合(特に名は秘す)では、健康保険証にマイナンバーを紐付ける際に、本人記入のみで、確認の為にマイナンバーや通知カードのコピー提出を行っていなかった様ですね。その上、そもそもマイナンバーの記入提出自体がなかったケースもあった様です。その為、保険証に紐づけられていたマイナンバーが元々間違った番号で運用されていたり、提出されていなかったマイナンバーを健康保険組合の担当者が、住民基本台帳で調べて転記した際に、名前だけ、あるいは生年月日だけを照合した為に、誤って同姓同名の人や、同じ生年月日の人の番号で紐づけてしまったケースが、現在判明しているだけで約7700件報告されています。この事を重く見た厚労省からは、保険者(健康保険組合)に対しては、健康保険証とマイナンバーのチェックの際は、氏名・生年月日・住所等5項目をチェックする様通知が行われて、保険者と被保険者の橋渡しをする事業主に対しても、マイナンバーの記載を義務化するという省令の改正が行われました。なんだか、「今更なにやっとんねん・・・はぁ(溜息)」ってな感じですかね。
今現在、世間(の大多数)では、マイナ保険証の制度の不備ばかりが報じられている様に感じます。しかし、起きている事を俯瞰すると、運用する側の出鱈目さがくっきりと浮き上がって来ますよね。私は、日本が誇る国民皆保険が、こんなトホホな人達によって動かされていたのかと知って、愕然としてしまいましたね。一部のポンコツ組合の人達は、自分たちが扱っている情報の重要性について考えが及ばなかったのでしょうか。監督官庁である厚労省や制度を所管しているデジタル庁では、この様なパチ物組合が、適当な仕事をしているというリスクは考えてはいなかったのでしょうか。出来の悪い連中が適当な仕事をしない様に、もっと確実な手順やマニュアルを提供する事は出来なかったのでしょうか。こんな能無し連中が36兆8千億円という途方もない金額の社会保障費に胡坐をかいて、雑な仕事で無駄を大量に拵えていると思うと、如何に温厚なわたくしと致しましても、「怒るでほんまに!」とやすし師匠の様に眼鏡がずり落ちてしまいます。厚労省の報告によれば、現在の保険証における不適切な処理(氏名の誤りや資格消失後受診など)は、年間500万件を超える数なのだそうです。そして、過誤請求によって生じる医療費の無駄は、前述した通り、年間1000億円以上にものぼるそうです。なんだか溜息が出てしまいますよね。今回判明した事を逆説的に考えると、本人確認が行われていない保険証でも、現在は通用してしまっていて、本人確認としての役割は殆どはたしていないという事になります。こんな事が現在でも堂々とまかり通っていて、私達の社会保障を担っている根幹である健康保険行政が甚だしく脆弱であったという事を明らかにしたというのが、今回の騒ぎの本質だと私は思いますね。
現在、マイナンバー保険証に対して、目を吊り上げて批判をしている人達は、医療情報という最も重要な個人情報がデジタルのデータとして記録される事に強烈な拒否感がある様ですね。文句を垂れ流している一部の意識が高い人達は、プライバシー保護の面や、その他にもマイナンバーカードのマイナス面ばかりを強弁している様に感じます。私は、個人の疾病罹患暦や診療記録といった医療情報保護の重要性については、否定するつもりはありません。様々な疾病と闘病中の人達が、他人に自分の病気の事を知られたくないのは理解出来ますし、インキンタムシ(正式名は股間部白癬症といいますね)や痔瘻など、ちょっと恥ずかしい名称の病気も可能なら隠しておきたいのが人情ですよね。ましてや悪い遊び場でよろしくない遊興に耽って、人に言えない様な病気を貰ってしまった人などは、その恥ずかしい病名は絶対に秘密にしておきたいですよね。一方で、そういった診療情報をデジタル化して、マイナンバーと紐づけて管理しておくメリットがとても大きいという事もまぎれもない事実です。マイナポータルで自分自身の診療記録や投薬歴を閲覧出来るという事は、現在、自分がどの様な治療を受けていて、何の為に現在処方されている薬を服用しているのかを確認出来るので、当然個人としてのメリットは享受できます。加えて、クリニック・介護施設や病院と調剤薬局やドラッグストア等、医療機関同士での連携を考えても多大なメリットが有る事は自明の理ですよね。そうして得られたビッグ・データは今後の医療の進歩に大きな貢献をするという事も期待されています。ましてや、今通用してしまっている保険証は、本人確認という基本のキが甚だしく怪しい代物なのです。デジタルの情報は、紙の様にいつの間にか消えてしまうという事がなく、名寄せや集計も即座に出来るので、不正の発見も容易になります。現在起きている個人情報の漏洩は、一部システムの不具合はありますが、大部分はヒューマンエラーです。しかも、そのエラーの大部分は、担当者が手堅い仕事を行っていれば防ぐことが出来た間違いばかりですよね。何でもかんでも反対の人達は、プライバシーの問題以外にも、「介護施設に入っている人達はどうやってカードを作るんだ!」「認知症の人が入所している介護施設では、マイナンバーカードの管理をどうするんだ!」といった少数の事例について声を張り上げていますよね。こうした少数の弱者に対する配慮は当然必要ですが、圧倒的に多数の人達のメリットをまず考えて、少数の人達については特例を作って対処をしていくのが政治の役割だと思いますよね。そういった少数の人々については、特別な法律や政令・省令を設けて、個別に対応すればいいと思うのです。しかし、なんでも反対人間は、そんな事には一切耳を貸さずに、「弱者切り捨てだー!」と思考停止に叫ぶばかりです。挙句の果てには、「マイナンバーカードを紛失したらどうするんだ」なんていう、知能指数ゼロの批判まで言い出す始末です。「そんなん知るか!無くさんように注意せいや!」なんて事を言おうものなら、このヒト達は確実に気が狂ったように喚き出しますよね。どうにもこのヒト達は、出来ない理由ばかりを声高に喚きたてて、どうやったら出来るのかという事を一切論じないという甚だ困った性癖をお持ちの様ですよね。そしてこの様な「何が何でも反対したるんや!」と息巻いている皆様からは、相変わらず“国家権力から監視されたくない”という根強い抵抗感が垣間見られます。このヒト達は、なにか、バレたら困る様な後ろめたい事をしているのでしょうか?悪い遊び場で道徳上問題のある行為に及んでしまって、大変に印象が悪い響きの病気でも貰ってしまったのでしょうか?
可哀そうなマイナンバーカード。この子は、有能で素晴らしい潜在能力を持っているのに、世間様からは全く褒めてもらえずに、周囲の能無し連中の失敗を全部押し付けられて、悪口ばかり言われています。その上、「おまえなんかいらんわ!」なんていう返納運動までされてしまっています。挙句の果てには、両親(政府)からも、「それなら名前を変えようか?」なんていうビックリ仰天な事を言われたり、「暗証番号は不要にしようか?」「自動更新にして申請しなくても発行される様にしようか?」なんていう、持っているポテンシャルを台無しにされるような事を言われてしまっている始末です。私は、この騒ぎを眺めていて、プロ野球で陽の目を見る事が出来なかった高校球児の姿を想像してしまいましたね。誰もが認める才能溢れる高校球界のスーパースターが、ドラフト1位で某人気球団に入団した後に結果をなかなか残す事が出来ず、口さがない地元のマスコミから、やれ「プロとしての心構えがなっていない」だの、「日頃の生活態度が悪い」なんていう精神論ばかりの批判を受けている、そんな姿が思い浮かんでしまったのです。おまけに、ボンクラコーチ連中からは、寄ってたかってトレーニング方法やフォーム改造を指導されて、口うるさいOB連中からも、アドバイスにもなっていない雑音を言われ続けて、溢れんばかりの才能がズタボロになってしまって、打者転向を言い渡される、そんな姿が目に浮かんでしまうのです。とうとう監督からは、「お前は名前が悪いんだ」なんて思いやりの欠片もない事を言われて、お前の名前は“村山豊(仮名)”ではなくて、明日から登録名は“ユタカ”にしろなんて命令をされて、ベンチ裏で人知れず涙している、そんな姿が想像されてしまうのです。私は、この騒動を横目で見ながら、「この国は、こんなので大丈夫だろうか?この騒動の行く末はいったいどうなるんだろう?」とげんなりとした気持ちでもの思いに耽りながら、よろしくない所で悪い遊びをした挙句に、貰ってしまった悪い病気を奥様にうつしてしまった(!!)という大変な修羅場を経験した後輩の事を思い出して、不謹慎な事なのですが思い出し笑いをしてしまったのでした。
Helter Skelter:しっちゃかめっちゃかの大騒ぎの後で、果たして哀れな白ウサギさんの行方は、何処に向かう事になるのだろうか・・・。
Helter SkelterはBeatleaが1968年はリリースした“The Beatles(The White Album)に収録された曲です。この曲は、ビートルズの楽曲の中では、ハードな路線を意識してつくられた曲だと知られていて、ポール・マッカートニー曰く、スタジオでこの曲を録音した際に、それぞれの楽器のパートのボリュームを全開にして不協和音たっぷりの、「ラウドでダーティー」な曲に作り上げたのだそうです。曲の最後には、リンゴ・スターが「指にマメが出来ちまったよ!」と叫んでいる声が残っています。この曲は、高校の時、下宿の隣部屋の友人が大好きな曲でした。彼は、自分のバンドでもこの曲を演奏していましたね。彼が調子っぱずれの声で、「へるた~すけるた~」なんて叫んでいたのを思い出してしまいました。彼に、「へるた~すけるた~とはどんな意味なんだ?」と聞いたところ、”無茶苦茶“とか”行き当たりバッタリ“といった意味であると教えてくれました。本来は、螺旋状に滑り落ちていく滑り台の意味らしくて、差し詰め通天閣のタワースライダーの様な代物でしょうか。高速で滑り落ちていく事が、”しっちゃかめっちゃか“であるとか、”わやくちゃ“といった意味が連想された語源である様ですね。私は、マイナ保険証を巡る騒動からこの昔話を思い出して、ぐるぐる回りながら、タワースライダーを真っ逆さまに落ちて行くシンボルマークのウサギさんの姿を連想してしまったのです。ウサギさんは、高速滑り台で”しっちゃかめっちゃか“になりながら、とても高い所から、奈落の底まで滑り落される己の運命を呪いながら、「ワヤやがな」と独り言を言っているのではないか、そんな不謹慎な想像をしてしまったのでした。
この様な駄文を最後まで読んでくださりありがとうございます。
皆さんにとって明日が今日よりも良い日になります様に。